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顔を上げると、先ほどと違い、全体を見渡すようにこちらに身体を向けている男性の顏を、今度ははっきりと見ることができた。
精悍な顔立ち。
少し陰りのある力強い目。
スーツ越しでも分かる、引き締まった身体。
最後に彼を見たのは私が大学に進学する以前だから、七年以上も前だ。
あの頃よりも成熟味を増し、知性と意志の強さを感じさせる顏から、私は視線を外すことができなくなった。
自己紹介をしながら会議室を見渡す彼の視線が、息を止めて見つめる私のところに巡ってくる。
目が合った瞬間、彼の視線が止まり、世界も止まった気がした。
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