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でも、それは私の思い込みによる錯覚に過ぎなかった。
時が止まったような一瞬ののち、彼の視線は何の感情も関心も示さず、すぐに私を通り過ぎていった。
ああ、この感じ……。
あの無関心さも、背中を向けられる虚しさも、初めてじゃない。
昔と同じだ。
きつく蓋をしたはずの胸の奥底に亀裂が走ったように感じて、みぞおちのあたりのブラウスを無意識に握り締める。
駄目、今は思い出しちゃ駄目。
彼の視線をまともに受けたことなどなかったことも。
その度に傷ついていた過去の自分も。
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