再会~初恋の残り香

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その日は朝から何かとうまくいかない日だった。 普段下ろしている髪を苦労してアップにまとめたのに、通勤ラッシュで揉みくちゃになっている間に無残に崩れたこと。 いつもなら廉価品で済ませているストッキングに今日だけはと張り込んだのに、履いている最中に破れてしまったこと。 一瞬にして数百円がパーだ。 それから、乗ろうと思っていた電車にも少しの差で遅れてしまったこと、その他諸々。 前の晩、緊張のためよく眠れなかったせいだろうか?  でも今日は私の二十四年の人生の中で最も重要な日だ。 高くそびえ立つビルの前で脚を止め、深呼吸する。 不動産大手の秦野地所に入社して四年目の春。 私は抜擢を受け、ゼネコン大手と提携して進めるビッグプロジェクトの選抜メンバーとして、発足の場に臨もうとしていた。
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