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「市井!…市井隆哉!」
「え? あぁ。芹沢」
二回生が始まり、数日が経ったある日。
今日の分の講義が全て終わり、正門を出たところで、甲高い声が聞こえた。
声のした所には芹沢彩香が立っていた。
「今帰り?」
柔らかい春の風があらゆる木々の梢を揺らし、彼女の黒髪をも揺らしていた。
芹沢彩香は、長い髪を高い位置で束ねていた。その髪の毛の束は、まるで馬の尻尾だなと思ってから、なるほど、ポニーテールとはこの髪型のことかと思う。
「そう」
彼女の質問に、僕は黒髪を見ながら答えた。
「芹沢は?」
「今からバイト」
「どこでバイトしてるの?」
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