第一章

8/21
前へ
/24ページ
次へ
こんなことなら、やはり初めから自分で閉めればよかった。 そう後悔する僕に向けて、窓を全て閉じきった彼女は、くるりと翻るようにこちらを向くと最高の笑顔を見せて言ってくれた。 「これで、平気?!」 と。 その瞬間、僕の固い心の壁は、開け放たれた。 「桜」と同じくらい「女の子」苦手だった僕の前に、「芹沢彩香」と言う名の一人の人が現れた瞬間だった。 それからというもの、彼女と僕は、選択授業で、安くてうまい学食が食べられる食堂で、キャンパス内のグレーのソファーで、コンビニよりも少し安く買える自動販売機の前で、偶然出会う度に、互いに声をかけては話すようになった。 僕と彼女が友達になってから、もうすぐ二年が経つ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加