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「まだ桜咲いてないけど?」
複雑そうに眉根を寄せて彼女が言った。
「まぁ、なんとなく。閉め忘れないようにね」
そう言ってごまかしたが、芹沢は話を続ける。
「市井君っていつも窓、閉めてる気がする」
「んなわけないだろ」
笑い合いながら僕たちは廊下を歩きだした。
彼女の手にもレポートらしきものがある。
この通りに用事があるという事は、僕と同じ心理学の塚本教授の所へ行くのだろう。
「アレルギーって、一生治らないの?」
隣を歩く彼女は、目を細めて僕を見た。
「人それぞれみたいだよ」
僕は、そう言いながら廊下を見やった。
長く続く廊下の窓は、どれも開け放たれている。
全て閉めて歩くのは気が遠くなる作業だ。
いや、まだ春じゃないから閉めなくてもいいんだけど。
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