第一章

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春に近づくと僕の心はそわそわし出し、窓を見ると閉めなくては、と思ってしまう。 その癖との付き合いももう10年になる。“桜アレルギー”が発症したのが、10歳だった。 彼女は、じっと窓を見つめる僕の心理状態を読み取ったかのように、さりげなく言った。 「やっぱり気になる? もうすぐ桜の季節だもんね」 「まぁ」 正直に答えると、彼女は白色のショルダーバックから使い捨てのマスクを取り出し渡してくれた。 「マスク?」 「なんだか顔色も悪いし、マスクでもする? 少しは落ち着くかも」 「ありがとう」 僕はお礼を言って、マスクをかける。
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