プロローグ

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「もうすぐ春だね」 僕の前を歩く、赤いランドセルを背負った女の子が唐突にそう言った。 「ほんとだね」 女の子の隣を歩くのは、ピンク色のランドルを背負ったもう一人の女の子。 よく見るとそのランドセルの側面には、桜の刺繍が彫られてあり、花びらが数枚舞うデザインになっていた。 「私、桜、大好きなんだ」 ピンク色のランドセルを背負った少女は、まだ花の咲かない木々を見上げて、平凡な風景の中に桜の色彩が見えるような声色でそう言った。 「私も大好きだよ。毎年春になると、みんなでお花見に行くの。お父さんと親戚のおじちゃんたちは……」
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