第一章

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午前10時半、僕はいつものようにキャンパス内を足早に歩いていた。 廊下側の窓が半分開いていた。風に揺れる木の葉の音が、僕の耳に。新しい緑の息吹が僕の目に届く。 20歳になったばかりの大学二回生の3月。春を心待ちにしているかのような穏やかで心地よい景色を眺めながら、僕はレポート片手に廊下を歩いていた。 このレポートを塚本教授に渡せば、晴れて僕は自由の身になる。 春休みは何をしようかな。 いつもよりも軽い足取りで歩いていると、ふと、廊下の窓が開けっ放しになっていることに気づいた。 僕は何気なく、廊下の窓に近づき、開いたままの窓をそっと閉めようと手を伸ばした。 「また閉めるの? 気持ちいいのに」
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