第一章

3/21
前へ
/24ページ
次へ
その時、まだ半分も閉めきっていないという状態で、背後から声をかけられた。 聞き覚えのある声だった。 ゆっくりと振り向くとそこにいたのは、芹沢彩香だった。 「おはよ」 彼女は僕と目が合うと、ふわりと微笑んだ。 「おはよ」 僕はそう答えながら、残りの半分の窓をそっと閉じる。 「やっぱり閉じるんだ」 彼女が口元に手を当てて笑って言った。 僕の行動なんてよくわかっているくせに、と思いながらも、この思ったことをそのまま口にする芹沢彩香の性格は、やはり嫌いじゃないなと思った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加