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『まぁ、そうなんだけどさ』
『やっと涼しげな風が吹いて来たところなのに』
“残念”とは言わないが、そう言いたげな表情をして。
無意識なのだろう、少しだけ唇を尖らす彼女に僕は言った。
『僕、桜アレルギーなんです』
『え……』
『風向きがこちらに変わったみたいで、さっきから大量の花粉が入ってきて、苦しいんです』
『嘘! 桜アレルギーだなんてそんなアレルギーがあるんだね! ごめんね、知らなくて!』
初めて彼女と話して、初めて僕の体質を打ち明けたのだから知らなくて当然なのだけれど、彼女は心の底から申し訳なさそうに表情を歪ませると素早く立ち上がった。
そして、開け放たれた窓を閉じてくれた。
僕の心はホッとする。これで、少しは安心できる。
そう思ったのもつかの間、僕は再び慌てることになる。
それは、彼女の行動が僕の想像を超えていたからだ。
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