君が笑えば

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    フロアはクリスマスとお歳暮と正月準備で混沌としている。 小さなスーパーだから品揃えにも限界があって、贈り物の類いより生活に直結したものが多い。 ネット通販は浸透しているし、加えて少し足を伸ばせばショッピングセンターがあるから、ここでクリスマスやお歳暮の準備をする人は滅多にいない。 でも、買い物に行くにもバスやタクシーを利用する高齢者のためになれば、と今年は少しチャレンジしてみた。 親父はあまりいい顔はしなかったが、自営業兼主婦のお袋は「きっと助かると思うよ」と肩を持ってくれた。 親父、家内は専業で、しかも子沢山で、子守りや家事のやり手はいくらでもあった時代とは違うんだよ。 お袋見てたら解るでしょ。 姉貴が出ていってから一人でバタバタしてんじゃん。 うちの場合、食事は売れ残った刺身や惣菜だから、あんまり料理に時間を割くことはないけど。 作り手が明確で、安心安全なものを。 これが俺の試みだ。 クリスマスチキンは24日・25日の2日間店で手作りしたものを出す。 チキンが余ったときのリメイクレシピを一緒につける。 それから車で30分くらいかかるケーキ屋の注文をうちのスーパーで出来るように手配した。 お歳暮はどうやっても量販店に太刀打ちできないから定番を少しだけ。 正月用にはおせちバイキングをすることにした。 下準備は目まぐるしく忙しくて、広告を打ったときにはさすがにへとへとだった。 お陰でクリスマス商戦はなんとか予約もとれてる。 おせちの予告は賛否両論だ。 自分で作るものだ、と頑ななお客様の気持ちも解る。 でも「我が家の味だ」とこだわってひどく労力を費やしたあげく大量のおせちに辟易するより、自分や家族の好きなものをつまむ程度にちょいちょい選んで形にするのも悪くないと思ってくれるお客様もそれなりにいた。 こればかりは31日が来てみないとわからない。 失敗すれば俺ら家族が大量のおせちに辟易するだけだ。
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