君が笑えば

3/8

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
  そんな感じで本当に忙しかったから、しばらく彼女と逢っていない。 朝から晩まで忙しなく動いているときは、申し訳ないけど脳内からすっかり消えていたこともあったけど、仕事が終わって風呂に入ってるとき、部屋で一人になったとき、そんな些細な時間に必ず彼女は脳内に帰ってくる。 逢いてえな そうは思っても、くたくたの体と翌日の仕入れを思えば簡単なメールか電話が限界で、それすらも間が空いたり途中で寝落ちしたりしていた。 毎日スーパーから自宅までの道のりを車で流しながら、夜を彩るイルミネーションを目に写した。 年々派手になっていく家、シンプルだけど電球の数が増えた家。 LEDの光たちが、寒くて暗い空間に華やかに映える。 商店街や教会の辺りはもっと華やかだろう。 そういえば、自宅でツリーを飾ったのはいつが最後だったっけ。 互いに実家暮らしではクリスマスに部屋で二人で、なんてのは夢のまた夢だし、そもそも世の中の行事にあわせて忙しくなる稼業では休みもない。 ツリーなんて小さい頃の何年かだけで、物置の片隅で埃を被っているだろう。 やっぱ逢いてえな 近々のスケジュールを頭の中で組み立て直す。 23日から25日の閉店まで、通常業務に加えてチキンの仕込みや調理、ケーキの受け取り等が絡んで、寝る時間の確保も不安だ。 クリスマスイブは日曜日。 通常なら休業だから、デートでも出来ただろう。 自分で企画したこととはいえ、そのせいで彼女と会う時間がとれないのを改めて思うと、自分を殴りたくなる。 家が近いんだから仕事帰りにでも顔ぐらい見に行けばいいのだろうが、顔を見たら長く一緒にいたくなるからそれもできない。 一息つけるのは25日の業務後と臨時休業の26日。 25日にケーキを持って駆けつけたって、売れ残りと思われて終わりだろうしな。 クリスマスも終わった平日の26日に少しでも長く逢えたら…… それだけを当面乗りきるための原動力にして、自分を奮い立たせた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加