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窓を開けて
敦は同じ予備校に通う真里に一目惚れをした。夏休みが始まる一週間前、勇気を出して告白をした。
真里は幼い頃から、女子校にしか通ったことがないらしく、父親以外の男とはほとんど喋ったことがなかった。返事はあっさり、いいよ。だった。
敦と真里のなかは急速に近づき、予備校の授業終了後、夜の公園に集まり話をすることが、二人の密かな楽しみになっていた。
「今度、家の近くで花火大会があるんだ。一緒に見に行こうよ」
「うん。待ち合わせ場所はメールで教えてね」
敦の笑顔に真里はスマホを取り出した。だがそのスマホは、傍らから現れた白いスーツ姿の女に取り上げられてしまった。
「お母さん……」
真里の声に敦は恐縮しながら挨拶をした。
「あ……、どうも始めまして……」
真里の母、明音は敦の方を見向きもせず娘を叱りつけた。
「最近、浮かれていると思ったらこういうことだったのね。これは家族との連絡用に渡した物で、あなたが遊ぶために渡したものじゃないのよ!」
明音はそう言うと、肩に掛けたバックのなかに電話を押し込んでしまった。敦は真里のことを助けたいと思った。
「あの、真里を誘ったのは俺の方で……」
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