窓を開けて

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「悪いけど、うちの娘には頭の悪いお友達は一人も居らないの。話し掛けないで」  明音は吐き捨てると、真里の背中を押し、車の停めてある駐車場の方へ消えて行った。  初めて出来た恋人だったのに。敦は何とか真里と連絡を取り、二人で一緒に花火を見に行きたいと思った。  敦は閃いた。簡単だ。真里の友達に伝言を頼めばいい。だがそれは上手くいかないだろう。伝言は確実に本人に届くだろうが、教育ママの明音が玄関にいるかぎり、真里はそこから先に出ることは出来ないからだ。  では部屋の窓から真里が脱出するのはどうだろう。これも駄目だ。ベランダからロープを垂らせば脱出はできるだろうが、真里の腕力では庭から部屋に戻ること出来ないだろう。「そうだ」  敦は呟くと予備校に向かった。タイミングよく玄関の前に真里と同じ学校の制服を着た女の子がいた。 「ごめん。俺、岡村真里と付き合ってるんだけど、花火大会の日、友達との約束って嘘をついて真里を外に連れ出してくれないかな?」 「それって真里のお母さんを騙すってこと? 無理無理、あの子のお母さん文化祭の手伝いで、ほんの少し家に帰るのが遅くなっただけで、学校に怒鳴り込んでくるようなモンペだから。私、関わりたくないわ」  女生徒は冷たく断ると敦の前を通り過ぎた。     
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