窓を開けて

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 敦は正面突破の恋愛を考えてみた。明音に真里との交際を真剣に願いでれば良いだけだ。だが頭が悪いお友達と言われたことがどうしても許せなかった。なんとか明音の守る家の扉を突破し、暗い密室に閉じ込められたお姫様に思いを届けたいと思った。  敦は予備校の受付口を見つめた。敦は不意に、明音を欺く方法を思いついた。  それから三日ほどたった。真里の家の前を、郵便局の赤いバイクが走り去った。  明音が玄関のポーチに現れ、ポストに入った手紙を抜き取った。ダイレクトメールが二通に、予備校からのお知らせが一通あった。  明音は家の階段を上ると、真里の部屋の扉をノックし、無遠慮にドアノブを回した。 「いつまでもむくれてないで、受験に集中しなさい。あなたはうちの医院の跡取りなのよ」  手紙を渡すと、明音は直ぐに部屋を出て行った。真里は予備校の青い封筒に書かれた、夏期模擬試験・受験票在中の文字を見つめると、怒りで封書を破りそうになった。  息抜きぐらい良いじゃない。だがその手は寸前で止まった。母の機嫌を損ねると、怒りが敦の家に向かうことが想像できたからだ。  真里は鉛筆立てのなかからハサミを抜き取ると封筒の頭を切り、受験票を取り出した。不意に真里の手が止まる。  なかから出てきたのは直筆の手紙だった。真里はそれを食入いるように読み始めた。     
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