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「あなたは今日から私の家族よ。そうね名前はマウにしましょう。エジプシャンマウのマウよ。マウ、あなたの顔は賢さで溢れているわ。だからこれから五分間だけ静かにしておいてね。完璧なトリックであなたを屋敷のなかまで運んで見せるわ」
私はそのまま父に借りたベンツS550を運転すると屋敷に帰ってきた。正門のところで守衛の中村に呼び止められた。中村は真面目を絵に書いたような男だった。助手席側のガラス窓を軽くノックすると私を車から降りるように促してきた。
「お父様から厳しく車を見張るように言われていますので」
私は素直に車を降りた。中村は普段見ない女の守衛と一緒に車の検査を始めた。さて中村は私の見つけた車のなかの密室を見つけられるかしら。
中村はまず運転席の扉を開けた。当然見える場所にマウはいない。次にシートのしたを覗いた。そこには荷物すらない。勿論、高部座席にもマウは乗っていない。
中村は車を半周すると助手席の扉を開けた。助手席のシートのしたを覗くがやはりマウはいない。中村は慎重にダッシュボードを開けた。そこにあるのは旅行用の地図と、曇り取り用のガラスクリナーだけだった。
中村はそのまま車の後ろに回ると、トランクルームを開けた。そこにはお父様のしまい忘れたゴルフバックがあった。
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