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御嬢さまのトリック
私は夕食に並んだ鴨肉のローストを口に運びながらお父様に話し掛けた。
「お父様、私、車の運転免許証の取得記念に仔猫を一匹飼いたいのですが?」
「ふむ。マリアのライセンス取得には素直におめでとうと言いたいが私は動物が嫌いでね」
お父様は屋敷のダイニングルームの長い机の向こうで蕁麻疹の出た腕をかき始めた。お父様は軽度の猫アレルギーだった。
「では一つ賭けを致しませんか? 私がお父様に気づかれず、仔猫を屋敷に持ち込めれば猫を飼っても良い。もし気づかれたなら、猫を飼うのを諦める。いかがでしょうか?」
「マリアは押しが強いな。ではその賭けに乗ろうじゃないか。だが約束は守ってもらうよ」「えぇお父様……」
私は一つ微笑むとお父様と契約を交わした。
翌日。早速、私はペットショップに行った。アクリルの窓のついたゲージの向こうでエジプシャンマウの仔猫がこちら見ていた。黄金色の体に、ヒョウ柄を蓄えたその容姿は、知性と気品が溢れていた。一目惚れだ。私はこの仔猫を買うことに決めた。
私は購入した仔猫の頭を駐車場で撫でた。
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