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恋人の丘
俺とサキは毛布の上に寝転ぶと、手を繋いで江ノ島の冬の星空を見上げた。恋人の丘の展望台には俺たちしかいない。
サキはあと半年で死ぬ。それまでの間、夜は一緒に眠ろうと約束した。
俺たちの出会いは会社の食堂だった。俺はいつも一人で本を読んでいたサキのことが気になっていた。思い切って声をかけてみたら、快よい返事が返って来た。始めてのデートはサキのリクエストで鎌倉に行くことになった。
JRの国立駅で待ち合わせをし、二人で切符を買った。花柄のシャツを着てお洒落をしたサキが乗車券の数字で占いができると教えてくれた。切符の右端にある、四桁の数字のなか二つの数で、その日の恋愛運がわかるらしい。俺のその日の恋愛運は八十九点だった。
俺はサキに切符の数字を聞いた。サキは最後まで教えてくれなかった。そのかわり、俺の腕に抱きつくと、今日は一日楽しみましょうと、浮かれる姿が印象的だった。
それから俺たちは結婚した。仕事がら転勤の多かった俺は、札幌、福岡、広島、また東京と、いくつもの街を住み歩いた。その間、サキは文句を言わず、俺について来てくれた。
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