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「それにあの服、キルトのつもり? 継ぎはぎだらけで格好悪い」
どうやら人形の会話は人間には聞こえないらしい。よおし喧嘩を買ってやろうじゃない。
「何か文句ある?」
「文句?」
「別に。ねぇ?」
二体のフランス人形は青いドレスと綺麗なガラスの目玉でクスクス笑って私を見下すと、それ以上喋ることをやめてしまった。
私はお菓子のショーケースに映った自分の顔を見つめた。くすんだ赤いボタンの目玉がみすぼらしく思えた。
家に帰って来ても気分は晴れない。何も知らないマリアは私を抱きしめベッドの上で呑気に眠っている。ここだけの話、人形は月明かりのしたでなら魔法を使うことができる。と、いっても部屋のなかを歩くことぐらいしかできないんだけど。
私はマリアの腕を抜け出し体を起こした。そのまま両手でボタンを掴むと、二つの目玉を力をいっぱい引き抜いた。
朝になり、マリアが私の異変に気づいた。
「あら目玉が二つとも取れちゃってる。もしかして自分の顔が気に入らないのかしら?」
当然よ。この世界には青いガラスの光る目玉を持ったお人形がいるのに、どうして赤いボタンの目玉を喜ばなければいけないの。
「もう仕様がないわね」
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