0人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ赤なほっぺ
手足の形の布のなかに綿を詰め込み、それを胴体に縫い合わせる。髪の毛は黄色い毛糸で目玉は赤のボタン。服はハギレで作ったワンピース。マリアは出来上がったボタン人形の私を抱きしめキスをした。
「うん。始めてにしては上出来。あなたの名前はフランソワーズよ。ちょっと我がままな私の妹、宜しくね」
私はその日以来、マリアの妹になった。マリアは私の髪をとき、私の服を作り、毎日、あなたは綺麗よと褒めてくれた。私は自分に自信を持ち世界一の美人だと思っていた。
そんなある日。お母さんにお使いを頼まれたマリアに抱かれ、私は生まれて始めて街へ出た。マリアは賢い女の子だ。市場を歩き回り、頼まれたシュチューの材料をあっと言う間に買いそろえてしまった。
その帰り道、マリアはお使いのお駄賃を握り締めお菓子屋さんに入った。マリアはショーケースに並んだキャンディーを真剣に選ぶ。お駄賃では飴を一つしか買えないからだ。
その時、どこからか声が聞こえてきた。店番のおばさんの後ろの棚に飾られた二体のフランス人形が私を見て笑っている。
「なあにあれあんなボタンの目玉でちゃんと前が見えているのかしら?」
最初のコメントを投稿しよう!