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「ありがとうございました!」
クリスマスソングが人々の購買心を掻き立ててやまない商店街の、カップルや親子連れが楽しそうにケーキを選んでいた温かい雰囲気の洋菓子店を出る。
「おいちそう♪」
「はは、碧たんこれを食べるのは明日だよ。我慢してね」
「はい♪」
碧たんはピッと真っすぐ右手を上げて承諾の返事をする。
「だーじょぶやよ。あお、しっかししてるかや!」
「そう?ホントに?」
「うん♪そだよ♪」
碧たんは手を上げたままニッコリ微笑む。
「ねえねえぱーぱ。あお、こうえんいく」
「碧たんは、どこの公園に行きたいのかな?」
「うみのこうえん!」
「うみ?どこだろう?」
私が判らず商店街の出口で逡巡していると、碧たんは私の手をぎゅっと握って。
「こっち!」
と、力強く引っ張った。
「こっち?」
「そ!」
力強い手は小さな体ごと私を牽引してズンズンズンズン。海際の国道方面に向け私を誘っていく。
「う!」
突然、碧たんが道端で蹲った。
「どうしたの碧たん、おしっこ?」
「ん~ん」
よかった違うらしい。こんな住宅地の一角でおしっこって言われても、私は困るしかなかっただろうからね。
うん、助かった。
「で、本当にどうしたの?」
私は碧たんの頭を撫でながら聞く。う~ん、だいぶ髪が長くなったな。そのうち床屋に連れて行かないといけないな。
「う~…」
碧たんは蹲ったままスッと両手を私に伸ばす。
「ん?なぁ~に」
よく分からないから聞いてみる。
「だっこ!」
ああ、そういうこと。
「よいしょ」
「いやー♪きゃはははは♪」
碧たんを持ち上げると、フワフワしたミルクの甘い匂いがした。そして思わず強く抱きしめてしまった。
「ぱーぱ、ぱーぱ」
「ん?」
「いちゃいよ」
「あ、ごめんね」
「いーよ♪こうえんいこ?あおがつれてくかや」
「そうだね、行こうか」
私は歩き疲れた碧たんをおんぶして、えっちらおっちら公園を目指す。
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