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アンドロイドは少女を愛す
その部屋は猫のオブジェで溢れていた。
招き猫、黒猫の置物、土鍋に詰められた仔猫の縫いぐるみ、棚や床に所せましと並べられた存在は全てが少女の願望だった。
ブロンドの長い髪に水色のワンピースを着こんだローサがリビングの真ん中に座り込み、コンパクトの鏡を頼りに頭にできた手術痕を眺めていた。
ローサはコンパクトをたたんで床に置くと上着の胸元を指でめくり左胸の上にできた二つ目の手術痕を見つめた。
ローサは静かに微笑むと、家庭用大型アンドロイドとケーブルで繋がれたパソコンのキーボードを叩きプログラムを打ち込み始めた。
窓の外には土砂降りの雨が見えた。
ローサはアンドロイドの腹部からパソコンのケーブルを抜き取ると命令を出した。
「フレンズ、お別れの挨拶がしたいから仔猫ちゃんたちを集めてちょうだい」
新しいプログラミングの終わったアンドロイドはゆっくり立ち上がるとキッチンのほうへ向かって歩き始めた。
リビングからキッチンへ向かう床の上で三匹の仔猫が昼寝をしたり、マシュマロボールにじゃれ付きながら自由に遊んでいたがフレンズは目もくれない。
「使えない」
ローサは愛情を込めフレンズの背中に呟く。
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