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十年以上前に作られた旧式のアンドロイドは金属むき出しの無骨なデザインだった。動物園のゴリラをモチーフに作られたらしいが、二メートルを超える巨体は機械兵と呼ぶほうがしっくりくる。
フレンズは鈍いモーター音を鳴らしながらとてもゆっくりとした動きで、キッチンの流し台の下にしまわれたラーメン丼を取り出して見せた。
そんなものをいったい何に使うつもりなのか。だがローサはこの不器用なアンドロイドが愛おしくて仕方がなかった。
ローサは目を細めながらリビングの机の上の紙に走り書きをする。
笑顔の数だけ、我慢の数だけ心のビームを出し続けた。だがこの日、少女は限界を向かえてしまった。
『私はいずれ人ではなくなる。
その前に死ななければならない。
その死は実験を伴った死。
人か、あるいは人ではないか。
それを知るため自殺を選ぶ。
今夜、私はアンドロイドの手によりこの世を去っているだろう。』
ローサは遺書を書き上げるとフレンズにもう一度、命令をだした。
「あと一時間たったら私を探しに来てね」
フレンズは返事の代わりに瞳のランプを明滅させた。
そして、少女は家を出た。
■ □ ■ □ ■
「もし彼女が本当に死んでしまった場合、全ての責任は君にとってもらうことになるからね、相葉くん」
「し、しかし、彼女の進学拒否は私の責任ではなく学園の判断ではないですか」
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