アンドロイドは少女を愛す

5/24
前へ
/24ページ
次へ
 相葉は校舎の二階廊下を歩きながら携帯電話を使ってローサと連絡を取ろうとした。  だがそれは全くの無意味だった。ローサは学園に友達らしい友達は一人もいなかった。  それは携帯を持つ意味を否定する。相葉は中庭に並ぶベンチに座り上辺の平和を楽しむ生徒たちを眺めながら記憶のなかの桐嶋ローサについて考えてみた。  十五歳の少女、桐嶋ローサはアンドロイドの権利を守ろうとするロボット人権活動家だった。  毎朝、フレンズと名づけられた旧式のアンドロイドと一緒に駅前に立ち大きな声を張り上げ演説をしていた。 「アンドロイドに人権を、脳内電子チップを認め全ての学生に平等な学習機会を与える運動に御協力下さい」  ローサの掛け声に合わせフレンズも一緒にビラを配る。  そこへ投げつけられる生卵。餌食になったのは言うまでもなくローサとフレンズだった。 「そんな旧式アンドロイドしか扱えないのに、良く俺たちの学校に入れたもんだな」 「アンドロイドに人権を与えてもボディーガードにはならないぜ?」 「自分の体を改造したほうが早いんじゃねぇの?」  この時代のアンドロイドには二つの意味があった。一つは始めから機械として作られたロボットのこと、もう一つは事情により体内に機械を埋め込まざるおえなかった人間に対する差別用語だ。     
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加