雪晴の朝に君と。

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実は、こうしてここに泊まるのは別に初めての事ではない。 ハンモックで眠りながら朝を迎えたい。 私のそんな些細な夢を叶えてくれたのは叶多くんだった。 真夏に一晩中ハンモックに揺られて眠るのは虫の餌食に自らなりにいくようなもの。かといって、虫の居ない春や秋の北海道の夜は涼しいを通り越して寒くて眠られない。 諦められずつい口に出たのを叶多くんが拾ってくれてあっさりと言った。 『じゃあ、カフェで泊まれば?ここなら虫も寒さも大丈夫でしょ?』 それから私は厚かましく何度か泊まっている。 だから夏から秋にかけて私はいつでも泊まれるようにと、カバンを一つ叶多くんの部屋に預けていた。 さすがに雪が降り始めてからは古民家をリノベーションして断熱をしっかり施したこのカフェでも、夜中から明け方にかけて暖房無しでハンモックに寝るのは無理になり、また春にと後ろ髪を引かれながらカバンを自宅に持ち帰ったばかりだった。
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