第三章

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第三章

「あっ」  保科先生の唇が私の首筋を這う。  ぞくぞくと快感が這い上がってくる。  私の胸を先生の手が弄ぶ。 「せん……せ……い……あぁ」 「佐倉……そんな声で先生なんて言うんじゃありませんよ。悪いことをしてる気分になる」 「あぁん……悪いことじゃ……ないんですか?」 「……悪いこと、ですね」  保科先生の口が私の桜色の頂きを含んでころころと舌で転がす。 「はあ……ん。せんせ……」  声が漏れた私の口を先生が塞いで舌を割り入れる。 「んんん……」  本当に好きな人の愛撫はこんなに気持ちいいなんて。何もかも捨ててもいいと思えるぐらい幸せ。  先生が唇を離した。私はねだるように先生を見つめる。 「可愛い目ですね、佐倉。「先生」、はやめましょう。圭介と呼んでみてごらん」  私は少し戸惑う。先生を下の名前で呼ぶなんて。恐れ多いような。 「呼ばないなら、続きはなしだよ」  そう言いながらも先生は、指で私のウエストを焦らすように触る。 「せん」 「圭介、ですよ」  先生の指が止まり、私は反射的に、 「けいすけ」  と声にした。 「いい響きですね。もう一度、呼んで」  先生はそう言って私の首の付け根を甘噛みした。背筋が泡立つような気持ちよさに、 「けい……すけ……!」  と私は声を絞り出す。 「貴女の声、顔、仕草。すべてがなんて可愛いんだろう。もっと弄ってあげましょう」 「やだっ、あん! けい……ああん!」  私は押し寄せる快感に保科先生のことしか考えられなくなる。 「圭、介……! 私も名前で呼んで欲しい……! 馨って」  ずっと夢だったのだ。先生に名前を呼ばれること。  先生は愛おしそうに私を見つめ、 「馨……」  と甘い声で私の名を呼んだ。  しびれるような甘さが全身に走った。  ああ! 「もっと……!」 「馨。馨……! 貴女は綺麗だ……」 「あっ! けいす…け! そんなところ舐めちゃ、イヤっ!」 「貴女の蜜は甘い。もう、我慢できません」 「圭介……! ください!」  先生の体温が私の体温と溶ける。先生の重み。私は先生の背中をかき抱く。  こんなことが現実になるなんて。  先生の余裕のない顔が、愛おしい。先生と一つになることにこれ以上ない喜びを感じる。今先生は私だけのものだ!
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