第ニ章

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 私たちはしばらく黙って料理を食べた。咀嚼音だけが聞こえて、沈黙に耐えきれなくなった私は、 「このオムライス、とても美味しいです。チーズが程よく溶けて。オムライスは私はやっぱりトマトソースが好きです」  と口にした。笑顔を浮かべたつもりだけど、引きつっていたかもしれない。本当は料理の味は全く分からなかった。ただ、口にトマトソースの熱さだけが残った。 「こちらも美味しいです。パスタは久しぶりに食べました。私の好きなアルデンテ。パスタは茹で加減が大事ですよね」  先生はそう返した。先生は普通だった。私だけが先生の反応にいちいち怯えていた。  私は自分のことを話し過ぎたことを後悔した。先生なら優しく受け止めてくれると思ってしまったのかもしれない。
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