第ニ章

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「どこに行くんですか?」  私は先ほどの空気をそのまま持ってきてしまって、おそるおそる尋ねた。 「どこに行こうかな。佐倉は行きたいところはありますか?」  先生はそんな私を気にしていないようだった。 「その……気まずくならないならどこでもいいです」 「気まずくならない?」  ここで初めて先生は私の様子に気付いたようだ。 「はい」  先生は小さくため息をついた。 「私が変なことを聞いてしまったせいかな、佐倉が気まずいのは」  保科先生は気落ちしたように言った。 「いいえ! 私が自分のことを話し過ぎたのがいけないんです。きっと先生は私のこと、酷い女だと思ったでしょう? 事実なので仕方ないことですが……」  私は慌てて返す。不安が言葉からだだ漏れだった。 「……この話は運転しながらするものじゃなさそうですね。近くに湖がありましたね。その駐車場に停めましょう」  保科先生はふうとため息をつくと、湖のある山の方に車を進めた。
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