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「それらを捨てる気はありません。……でも、貴女に好きだと言われてこんなにも嬉しく思う自分がいる。貴女をこのまま大学に帰したくないと思う自分が、います」
先生の瞳には複雑な光が宿っていた。
私はやっぱりこの人が好きだと思った。独り占めしたい。でも、それが叶わないなら。
「私は、先生にとって生徒以上になりたい。それだけが望みです」
「後悔……しますよ?」
先生が私の目を見たまま、低い声で言った。
「先生が、でしょう?」
「二人とも、です」
「望むところです」
先生はふっと目を和ませた。
「なんだ、やっぱり佐倉のまま、ですね」
そう言うと、先生は私の唇を奪った。
私は自分が思っている以上に悪い女だと自覚した。
その日私は午後の講義に出なかった。
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