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その歪んだ顔に、なぜか胸の奥がざわついた。もっとそんな顔をさせてみたい、なんてことを考えている自分に気付いて、軽く驚く。
そのときだった。
「おおい、まだ誰か残ってんのか!」
廊下から響いてくる大声は、狩野の担任で日本史教師の梶だ。
ち、と舌打ちをしたのは、春宮だった。
「それを寄越せ」
「え?」
男にしては随分と繊細な長い指が、火の点いたままの煙草を狩野の口からむしり取った。
準備室の扉が開く。煙草を手にしたまま、春宮は悠然と振り向いた。
「なんだ。貴、お前か」
戸口を塞ぐように立っている梶は、春宮を見て得心したように頷いた。だがすぐに後ろに立つ狩野に目を留め、しまった、という顔になる。
(「タカシ」?)
狩野の耳がぴくりと反応する。
梶は体育教師と間違えられるようなゴツい体つきで、上背も狩野と同じくらいある。いかにも男臭い容姿を裏切らない熱血教師キャラが、狩野には鬱陶しくて仕方ない。いずれにせよ春宮とは対照的な存在だ。教科も違うし、接点がどこにあるのか想像もできない。この二人が下の名前で呼び合う仲というのは、あまりにも意外すぎる。
だが春宮は、落ち着いた声で「梶先生」と呼びかける。
「ちょっと、狩野の進路相談に乗ってました」
「進路相談? 担任の俺にじゃなく?」
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