煙草が似合わない

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 全力で否定しながらも、狩野の視線は、シャツを脱ぎかけた春宮の身体に釘付けになってしまう。  薄く平坦な胸元は、深く割れた前立て越しに見ると妙になまめかしい。華奢な肩も細い腰も、その気になれば簡単に組み伏せてしまえそうだ。それに、さっきから目について仕方ない、強く握ったら折れやしないかと心配になりそうな手首。 「顔に書いてあるぜ」 「なっ」 「お、丁度いいもんがあったな」  ぐるりと辺りを見回した春宮は、戸棚のガラス扉を開けた。そこから「実行委員」と印刷された腕章を取り出す。体育祭や文化祭で使うやつだ。  春宮はその腕章をぽいと狩野の膝の上に投げ出すと、中途半端に脱ぎかけていたシャツをばさりと脱いだ。インナーのシャツも首から抜き取ると、くるりと後ろを向いて、背後で交差させた両手首を狩野の方に差し出す。 「はい、その腕章で巻いて」 「へ?」 「手首縛るんだよ。マジックテープで輪っかの太さを調節できるようになってるだろ?」  狩野は膝の上の腕章を手に取った。それを、恐るおそる春宮の両手首に回してみる。 「もっと強く。やってる最中にほどけたら、興ざめもいいところだ」  言われるままにきゅっと輪を絞り、マジックテープで留める。 (身体の自由を奪って……好き放題に……)     
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