第1章

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ケータイ小説サイトで、自分が書いているエッセイに隣人の愚痴を零している人がいる。 愚痴を零すくらいなら小説に登場させてあげれば良いのだ。 ホラー作品で、逃げ回った挙句にゾンビに食われる犠牲者。 ファンタジー物では、深い森の中で魔獣の群れに追い回される転生者。 歴史時代物で、泣き叫ぶ女子供を惨たらしく惨殺する侵略軍の兵士。 ミステリーでは、通り魔殺人を繰り返す殺人鬼。 性格や行動様式が愚痴の相手にそっくりな人物を登場させ、読者に晒してやれ。 エッセイの作者にそう伝えようと、真っ赤な指でスマホの画面をタップする。 え!?真っ赤な指? スマホを机の上に置き両手を見た。 血塗れで真っ赤に染まっている。 目を下に落とす、畳が血で染まった足跡だらけ。 「母ちゃーーーーん!」 部屋を飛び出し階段を駆け下り、何時も母ちゃんがテレビを見ている居間に飛び込む。 血塗れで背中に包丁が刺さった母ちゃんが、炬燵に覆いかぶさるようにして死んでいる。 昨晩、「仕事を探せ! 仕事しろ!」と幾度も繰り返すのに激怒した俺が、思わず刺殺してしまったのだった。 ど、如何しよう? 母ちゃんの年金で生活していたのに、これから如何やって生活して行けばよいのだろうか。
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