550人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
5 人狼と吸血鬼
ジェスリルの話が終わり、一旦解散すると、エリルは部屋で休ませる。
ちゃっかり猫の姿になって、エリルについていこうとしたユリウスの首根っこは、しっかりロウが押さえた。
ロウはエリルとの出会いを思い出していた。
森の中で野犬が騒いでいた。
黒いローブの人間が走り去る姿を目の端に捉え、野犬達の取り囲むモノに目を向ければ、何か布にくるまれた塊があった。
もぞもぞと動く其れは、どこか淡い輝きを伴って、ロウの目を引き付けた。
ロウは野犬の群れを飛び越えて、その塊に近付いた。
「散れ!」
うるさく吼えたてる野犬達を一喝して追い払う。
相変わらずもぞもぞと動く布の下から小さな人の手と頭が覗いた。
(人間の赤ん坊か・・・)
黒髪に黒目の小さな子どもは、ロウに怯えることもなく嬉しそうに手をのばしてくる。
ロウはしばらくそれを見下ろしていたが、まだ遠巻きにこちらを伺う野犬達の気配を感じ、その子どもを連れて行くことにした。
今思い出しても、あの時何故、人間の子どもを助けようと思ったのか分からない。
最初のコメントを投稿しよう!