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館に入るとジェスリルが螺旋階段を降りてくるところだった。
優雅にマーメイドラインのドレスの裾を捌いて降りてくると、ロウと短いあいさつを交わす。
「うちの子を助けてくれたようで感謝するよ」
「エリルは本ばかり読んでいると思ったけど、木にも登れるとは知らなかったよ」
二人が面白いものを見るような目で見るので、恥ずかしくて居た堪れない。
しかも仔猫共々濡れそぼっている。
床に降ろされた私が、ロウの腕の中を名残惜しい気持ちでいると、大きな手が私の濡れた髪を耳にかけるように動き、優しく肩に置かれた。私はロウにもう一度助けてくれたお礼を言った。
腕の中の仔猫がぶるりと体を震わせた。
「エリル、こっちへおいで」
ジェスリルに呼ばれて近寄れば、魔法の力で瞬時に濡れた服も髪も乾いて暖かさに包まれた。
仔猫もすっかり乾いて毛がふんわりとしている。
ロウは雨よけのマントを羽織っていたため、ほとんど濡れておらず、ジェスリルの魔法は断ったようだ。
私はロウのマントを預かり、お茶を入れる為に台所へ向かった。仔猫にもミルクをあげよう。
客間にお茶を運ぶと、いつもは話の邪魔をしないように自室に戻るのだが、今日は違った。私にも話があるという。
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