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そう言って、私を部屋まで送り届けると、おやすみと、優しく髪にキスを落とした。
暗い地下牢に降りて行った私は、ジャラリと鎖を引きずる音に眼を凝らした。そこには、真っ白な長い髪の女性がいた。鎖に両手両足を拘束され、白い服にはあちこちに血の滲んだ跡がある。
手も足も僅かに覗く首元も深い皺が刻まれ、老女であることが分かる。良く顔を見ようとさらに近づけば、老女が顔を上げてこちらを見た。
その瞬間、それが誰であるか気づいた私は驚きで凍り付いた。
あの美しい魔女が、私の養い親であるジェスリルが、一息に歳をとったかのように、老婆となってそこに繋がれていたのだ。
助けなければと、近寄って声をかけると、そこにいたのはジェスリルではなく自分と同じ姿の子どもだった。
子どもの顔や手の皮膚はみるみる痩せて乾いていく。髪も白髪に変わって、恐ろしい形相でこちらを睨み付け、私に向かって呪詛の言葉を投げつける。
私は恐怖に叫び、そこから逃げようとして目が覚めた。夢を見ていたのだ。
「エリル、どうした?大丈夫か?入るぞ」
ロウが部屋に飛び込んで来た。どうやら夢の中だけでなく、実際に悲鳴をあげていたようだ。
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