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3 魔女と吸血鬼
目が覚めると、まだ外は暗く、雨音も続いていた。
眠る前ぐちゃぐちゃだった頭の中は、少し落ち着いていた。
ジェスリルの代わりが私に出来るはずはない。だけど、私が拒む事でロウやジョシュたちが困るのも嫌だ。ジェスリルの妹がどんな人かも知らずに、私が魔女の力を受け継ぐのも何か引っかかる。
だからすぐに答えは出せない。
もっと知るべき事がたくさんある。
それに、一度ここから出て、ジェスリルの元を離れてみよう。
私はそう決意してベッドから降りた。
二階にある自分の部屋を出て、一階のダイニングへ行くと、ジョシュが一人、席についていた。ジョシュの前には赤い液体の注がれたグラスがある。
それが何か、私は知っている。
ジェスリルの血だ。
ジョシュがここにやってくるのは、ジェスリルに血を分けてもらうためだ。人間の血だとすぐに空腹になってしまうが、魔女の血ならグラス一杯で、三カ月程持つのだと聞いたことがある。
それに、太陽の光に弱い吸血鬼族のジョシュが、伯爵として人間の世界で生きて行けるのは、この魔女の血のおかげなのだ。
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