550人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
大きな胸の中にぎゅーっと囲い込まれて、次第に苦しくなってくる。
声が出せず、ジョシュの腕を叩いて正気に戻ってもらおうとしていると、急に腕の力が緩んだ。ホッとしたのも束の間、ジョシュが大きな掌で私の頬を包み込むようにして、こちらを覗き込んだ。背の高いジョシュを思いっきり見上げる形で硬直する。
「やっと私のところに来る気になったんだね。この日をどんなに待ち望んだか!」
若干興奮気味のジョシュの様子に、何か誤解が生じている気がする。
そういえば、以前「エリルは大きくなったら、私のところにお嫁に来るんだよ」と言っていたような。
「そ、そうじゃなくてっ」
焦ってジョシュの腕を振りほどこうとしていると、獣の唸り声のようなものが聞こえ、次の瞬間、ジョシュが床に倒れていた。
一匹の銀色狼がジョシュを組み敷いていた。
ロウだ。
ジョシュはすぐにロウを跳ね除けて立ち上がった。
二人は距離をとって睨みあっている。
元々仲が良いというわけでもない二人だったけど、こんな風に争う姿は見たことがなかった。
「危ないからエリルは下がっていなさい」
ジョシュの言葉に、二人が本気で戦い始めそうな雰囲気を感じて、慌てて二人の間に入った。
「喧嘩しないで!」
最初のコメントを投稿しよう!