550人が本棚に入れています
本棚に追加
足に擦り寄る柔らかな毛並に、皆の視線を集めている事に気付いたのか、仔猫はミュゥと鳴いた。
次の瞬間、猫は私と同じくらいの大きさにまで膨れ上がり、ポンと音を立てて少年の姿になった。
明るい金色の髪に、翠色の瞳、白いドレスシャツに淡い水色のジャケット姿。
少年に変身した猫はニコリと天使のような笑みを浮かべて言った。
「今朝は助けてくれてありがとう、エリル。
ご挨拶が遅れました、魔女ジェスリル。
妖精界から参りました。ユリウスと申します」
「これで四界の役者が揃ったな」
ジェスリルはそう言って立ち上がり、皆を魔女の書がある書庫へと案内した。
ユリウスもロウとジョシュも、今日はジェスリルに呼ばれてここへ来たらしい。
私は驚いてまじまじとユリウスを見た。
ユリウスはいたずらっぽく笑って人差し指を唇に当て、私にだけ聞こえるように囁いた。
「選択肢には僕も入れておいてね」
何の選択肢?問い返そうとしたが、廊下へと出るジェスリルを追って行ってしまったため、言えず仕舞いだった。
ジョシュがサラリと私の腕をとり、疲れていないかと気遣ってくれる。
「さっきの話の続きはまた後で聞くよ」
優しく微笑む姿は、いつものジョシュだった。
最初のコメントを投稿しよう!