5 人狼と吸血鬼

2/3
550人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
まして、もう何年も人の姿をとったことなど無かったのに、その日以来、度々人の姿になるようになった。 ロウは子どもを魔女のもとへ連れて行った。 エリルがあの走り去ったローブの人間に捨てられたのだと気付いていた。 「一杯どうだ?」 談話室のソファーに寝そべって物思いに耽っていたロウに、ジョシュがグラスをさしだした。 ジョシュはソファーの肘掛に軽く腰掛けて、グラスを煽っている。ロウに酒を勧めるなど、だいぶ酔っているのかもしれない。 ロウは黙ってグラスを受け取り、一息に飲み干した。 ジョシュは機嫌良さそうに、胸元から引っ張り出したペンダントに口付けている。 「これが何か知っているか?」 小さな雫型のガラスのペンダントトップが、蝋燭の光を反射して煌めいた。 うっとりとそれを眺めて、返事など期待していないジョシュは、勝手に話し始める。 「これにはエリルの涙が入っている。エリルがお守りにくれたのだよ。この私の為に」 泣いているのか笑っているのか。ジョシュの声はロウに話しているというよりは、独り言のようだ。 「昔、毒にやられてここまで必死に逃げて来た。ところがあと一歩のところで力尽きて倒れてしまってね。死を覚悟した私を、エリルが見つけて助けてくれたんだ。     
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!