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まして、もう何年も人の姿をとったことなど無かったのに、その日以来、度々人の姿になるようになった。
ロウは子どもを魔女のもとへ連れて行った。
エリルがあの走り去ったローブの人間に捨てられたのだと気付いていた。
「一杯どうだ?」
談話室のソファーに寝そべって物思いに耽っていたロウに、ジョシュがグラスをさしだした。
ジョシュはソファーの肘掛に軽く腰掛けて、グラスを煽っている。ロウに酒を勧めるなど、だいぶ酔っているのかもしれない。
ロウは黙ってグラスを受け取り、一息に飲み干した。
ジョシュは機嫌良さそうに、胸元から引っ張り出したペンダントに口付けている。
「これが何か知っているか?」
小さな雫型のガラスのペンダントトップが、蝋燭の光を反射して煌めいた。
うっとりとそれを眺めて、返事など期待していないジョシュは、勝手に話し始める。
「これにはエリルの涙が入っている。エリルがお守りにくれたのだよ。この私の為に」
泣いているのか笑っているのか。ジョシュの声はロウに話しているというよりは、独り言のようだ。
「昔、毒にやられてここまで必死に逃げて来た。ところがあと一歩のところで力尽きて倒れてしまってね。死を覚悟した私を、エリルが見つけて助けてくれたんだ。
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