549人が本棚に入れています
本棚に追加
ミュゥミュゥという鳴き声はおそらく仔猫のものだろう。
窓を開けて外を見渡せば、いた。
木の枝にしがみついている黒い仔猫。
仔猫も此方に気付いて、ミュゥと助けを求めるように鳴き声を上げる。
木の枝は窓のそばまで伸びている。おいでおいでと呼んでみるが、震えるばかりで枝を歩いてくる余裕は無さそうである。
それならこちらから行って、抱いて戻ってくるしかない。
枝は丈夫そう、ではない。
下から登るには私の背の届く高さに枝が無いので無理そう。
上を見上げれば、立派な枝が屋根に向かって伸びている。あれなら私の体重を支えられそうだ。
私は窓枠に登り、その枝にぶら下がってみた。
しかし、そこから仔猫のいる場所までは5歩は歩かねばならない。
なるべく体重は上の枝にかけるようして、下側の枝の上を歩いた。
そしてどうにか仔猫のいるところまで辿り着いたはいいが、困った。
仔猫を抱いていては枝にぶら下がれない。
帰り道を考えずに進んでしまった5歩の距離がうらめしい。
思案の末に仔猫を私の肩にしがみつかせるように乗せて、来た時のように戻る事にした。
最初のコメントを投稿しよう!