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ジェスリルは優しく私を抱き寄せて、動揺する私の背を撫で続けた。
雨は降り続いていた。外はすっかり暗くなっており、風も出てきたようだ。今夜は嵐になるかもしれない。
ぼんやり外を眺めていると、誰かがやって来るのが見えた。
二頭建の馬車には見覚えがある。
ジョシュが来たに違いない。
ジョシュは吸血鬼族だが、人間界で暮らしており、バークレイ伯爵と呼ばれている。
いつも私にお土産をくれる一人だ。
私は急いで玄関へ降りて行った。
「いらっしゃい、ジョシュ」
馬車寄せから執事に傘を差しかけられながら歩いて来たジョシュは、チーフで袖に付いた雫を払いながら、私を見て嬉しそうに相好を崩した。
すぐに私を腕の中に囲い、「あぁ私の可愛いエリル、元気でいたかな?」と髪を撫でてくれる。
ジョシュは昔から私を甘々に甘やかすきらいがある。
見た目は二十台半ばくらいに見えるが、実年齢は不肖である。サラリとしたシルバーブロンドに青い眼、優雅で気品溢れる身のこなしは社交界一の貴公子と謳われているとか。
ふと、ジョシュが手を止め、私の顔を覗き込んだ。
「エリル、具合が悪そうだ。今日は早めに休みなさい」
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