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そんな考えが俺の脳裏を掠めた瞬間。
俺は楓に海に向かって投げ飛ばされていた。
頭から海に突っ込み、俺は死を覚悟する。
ただ、そこはもちろん、とても浅い場所だったから、すぐに立ち上がることが出来た。
頭をぐいっと引っ張られて、上を向かされる。
「大丈夫ですかー」
「死ね! 俺がここで死ぬ前に死んでくれ!」
楓は面白そうに笑った。
「大丈夫大丈夫。千夏が死にそうになったら、俺が助けるから」
「嬉しくねえよ!」
そう言いながら、俺はさっきの楓の表情を思い出す。
俺が冬川先輩に担がれているのを見たときの顔だ。
それまで、他の先輩達に笑顔を見せていたのに、一瞬にして真顔になった。
そうだよな……やっぱり俺であったとしても、好きな人が違う人と密着してたら嫌だよな。
「おい! 何ぼーっとしてんだよ」
楓の声で我に返る。
その声と表情は笑顔だったから、俺は安心する。
「何でもない」と言って、楓に思いっきり水をかけた。
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