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ばっと楓の腕が離れる。 真正面から楓が俺を見た。 「大切だからだよ!」 楓が叫んだ。 「何で俺らのところから離れたんだよ!? 危ないだろ?!」 「冬川先輩とどっちが?」 「はっ?」 「冬川先輩の方が大切だろ?」  楓の目が泳いだ。 「何、言ってんだよ……脳に水入ったか」 「……そうかもしれない」  俺は俯いた。 俺、今、何言った?  楓は怒ったように立ち上がる。 「冬川先輩と千夏、どっちが大切かなんてそんなの決まってるだろ!!」  しばらく休んでろ、と吐き捨てるように言うと、楓は先輩達のもとに戻って行った。  そんなの決まってる――?  どっちだよ。分かんねえよ。  でも、それよりも戸惑っていたのは……俺自身が―― 『自分だったらいいのに』と思ってしまったことだった。
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