2048人が本棚に入れています
本棚に追加
ばっと楓の腕が離れる。
真正面から楓が俺を見た。
「大切だからだよ!」
楓が叫んだ。
「何で俺らのところから離れたんだよ!? 危ないだろ?!」
「冬川先輩とどっちが?」
「はっ?」
「冬川先輩の方が大切だろ?」
楓の目が泳いだ。
「何、言ってんだよ……脳に水入ったか」
「……そうかもしれない」
俺は俯いた。
俺、今、何言った?
楓は怒ったように立ち上がる。
「冬川先輩と千夏、どっちが大切かなんてそんなの決まってるだろ!!」
しばらく休んでろ、と吐き捨てるように言うと、楓は先輩達のもとに戻って行った。
そんなの決まってる――?
どっちだよ。分かんねえよ。
でも、それよりも戸惑っていたのは……俺自身が――
『自分だったらいいのに』と思ってしまったことだった。
最初のコメントを投稿しよう!