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手折った愛の行く末を
「ねぇサニア、だいじょうぶ?」
不意に声を掛けられて私は顔を上げた。洗濯物の山を抱えながらリィが眉をひそめて立っている。
私は意味が解らずに首をかしげて「なにが?」と返しながら誰かの靴下を紐にぶら下げた。
顔を上げればパタパタと風に揺られた洗濯物がまるで旗のように靡いている。溜まりにたまった洗濯物を片付けるには最高の天気だ。
私達は1ヶ月ほどの航海を経てようやく小さな港町へと停泊することができた。仲間たちは不足した真水や食料の買い出しだったり、肉や果物を日持ちするように加工していたり、武器の整備品や薬品類の調達、はたまた洗濯係や鍛錬したり……エトセトラ。
一週間ほどの滞在で各々好きなことに打ち込んでいた。これが終わったらまた私たちは海へと繰り出して依頼を探すことになる。
だから、真水を使って洗濯物を片付けられる今がチャンスだ。
頬を甘い香りがする風が撫でていく。ああ、これは花の香りだろうか。気持ちいい。そんなことを思って再びリィの顔を見れば変わらない怪訝そうな顔がある。
「……なにが、って。ダニーのことだよ」
「……」
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