手折った愛の行く末を

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理由は簡潔だ。ダニーが結婚したから。危ないところを助けてもらったとかで、その港町にいた彼女はダニーのことを好きになったらしい。 ダニーも満更ではなかったし、もともととても気の優しい人柄だ、傭兵団の荒事にはいつもつらそうな顔をしていた。そのことで相談されたりもしていたから、彼が平凡な人生を選んだことに私は何も言わなかった。……何も言えなかった。 だって彼がつかんだ幸せだ、彼が選んだ人生だ。結局私は出港するその時まで彼に何も言えぬまま、彼の顔を見ることもないまま、再び海へと戻った。 それ以来団員の皆が私の様子を心配そうにしてくれる。大丈夫だよと、リィにも以前にそう言ったのに彼女は優しいからこうして私を心配して今日だって残って一緒に洗濯を干してくれている。 平気だよという度に彼女のかわいい顔が曇る方がよほど心苦しいというのに。 「だってあれからちっとも笑ってないじゃない。……ずっとそんな顔してる」 「そんな顔ってどんな顔よ」 「『苦しい』って顔」 「……それはリィのほうだよ。…気の所為じゃない?」 「茶化さないでよ。私たち家族、でしょ」 リィは山のような洗濯物を下ろして眉を吊り上げる。コロコロと表情が変わる様子は同性の私から見たって可愛らしくて、いいなぁ。なんて。     
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