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これじゃ昔と逆ね、皮肉を込めて言いながら彼女を愛馬に乗せた。左右を守るようにマートンとジェシカをつけて、離れた場所にいるよう伝える。愛馬の上から不安そうにダニーを見つめている彼女に、ダニーは笑顔を返している。
昔は私に向けてくれていた笑顔だなぁ、なんてぼんやりと思って、思考を振り払う。
「あまりに惚気すぎて負傷なんてしないでよね、私が彼女に合わせる顔がないよ」
「ははは、お前元々顔合わせたことないだろ」
「……」
図星をつかれて言葉に詰まる。
確かに例の話を聞いたのも人伝で、そもそも私が最後にダニーと話したのはその港に降りた日だったように思うから、返す言葉もない。
口ごもる私に、ダニーは声を上げて笑うと実はさ、と頭を掻いた。
「俺お前のこと好きだったんだなって、船を下りてから気付いてさ」
「……なにそれ」
「いや、ホントビックリでさ。……だからサニアと話せないまま別れたのずっと心残りだったんだよな……だから、その」
「……まって。その先は絶対に言わないで、死んでも言わないで」
「なんで」
「私はもう『新人のサニア』じゃないの、後輩もいるの。だから、弱くなりたくない」
「……」
「そこまで言ってくれただけで充分。私も……やっと前に進めそう」
「サニア」
「ね、ダニー。強くなったわたしをみてて。今度は私があなたを守る番。あなたは奥さんを守って、そして子供を守ってくれればいい。私があなたたちを助けるから」
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