手折った愛の行く末を

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隣に懐かしくも温かい気配がある。ずっと一緒だった体温はもう別の人のものだけれど、私はそれでいい。 あの時言い出せなかったのも、こうして今更な話をしているのも、全部笑い話にできるくらい大きくなった。それで十分だ、だって彼らが幸せなのだということが顔を見ただけで十分に分かってしまうのだから。 「わかった。……けど、少しくらいお前のこと助けたっていいだろ。一応兄貴なんだから」 「何言ってるの、私が姉でしょう」 「いーや、俺が兄貴だって。半年早く団に入ったんだから」 「けど、私の方がしっかりしてるし、今はもう継続年数でダニーを超えてるわ、私の方が姉よ」 「……ははっ変わんねぇなぁ」 「お互いにね」 ああなんて心強い気配なんだろう。ずっと置いてきてしまっていた気配だ、ずっと忘れようとしていた気配だ。暖かくて柔らかい、顔を見なくても安心する、そんなダニーだけの気配。 私はダニーと、それから後輩たちの顔を見回してうでを伸ばす。 遠くに影が見える。賊とぶつかるまであとわずかだ。疲労も抜けきらない体だけれど、私は一番の声を張り上げた。 ……これはあの時彼らを祝福できないくらいに幼かった私を殺すための戦いだ。 「我らに勝利を!」 「「勝利を!!」」     
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