ホワイト・シチュー・クリスマス

9/16
753人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「クリスマスといったら大体チキンだと思うんですけど、西園家ではホワイトシチューなんです」  視線の端に見えてきた大型スーパーの看板に、車線を左に変更した。西園は続ける。 「窓際に置いてあるツリーの電飾が赤とか青とかに光ってて、食卓にはほかほかと湯気が上がる真っ白いシチューがあって……」 「家族そろって食事か?」 「はい」  目をキラキラと輝かせ優しく微笑んだ彼女に、こちらの身体まで温かくなった。まるでテレビCMのような幸せな光景に溶け込む今よりも幼い彼女。 (これからは俺が……)  俺は唇を引き結び、ハンドルを握り直した。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!