第一章 絶望と異世界と狼男と少女

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第一章 絶望と異世界と狼男と少女

 私の父は、みんな聞いたことのあるような大きな大学を卒業した。  父は昔から頭が良かったらしい。定期テストで上位10位から下はなったことが無いと、私のテスト結果を見る度に言っていた。  大学を出た父は弁護士になった。頭が良くても仕事は忙しかったのだろう。いや、頭が良かったからと言うべきか。つまり何が言いたいのかというと、私は父にどこかへ連れていってもらった記憶が無いということだ。  別にその事を寂しいとか、怒ったりはしていない。ひょっとしたら昔は文句の一つも言ったかもしれない。でもあの父なら、そんな事は意に介さなかっただろう。  私の母は、そんな父と同じ大学を出た。  私の母は顔立ちが良かった。常にしかめっ面の父と並べれば、その美しさは際立っていた。お陰で母は、大学時代にミスキャンパスに選ばれたとか、大手芸能プロダクションに誘われたみたいな自慢が出来た。  母は顔が良くても、料理は出来なかった。母の作ったお弁当というものを、私は食べた記憶が無い。小学校の遠足の時には、コンビニ弁当を持っていかされた。  二人が結婚してから二年後に、私が産まれた。  頭の良い父と、顔の良い母の遺伝子を受け継いだ私は今──  ──両親に見捨てられ、独りで生きている。
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