第一章 絶望と異世界と狼男と少女

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 確かにこの商店街には、青果店も精肉店も本屋も薬局もあった。 「そもそも第一、なんで商店街にそんな店を開いてしまったんだ?」 「それは……都会の土地は高いから手が出せなくて、俺達の所持金で買えたのがここだけだったんだ」 「所持金? 土地を買う? お前ら元からここに居たわけじゃ無かったのか?」 「あぁ、俺達は元々、森の妖精だったんだ」 「森の妖精!?」  突然のカミングアウトに、私は激しく反応する。実を言うと、私は昔から妖精とかそういった類いが好きだ。森の妖精というからには森にいるもんだと思っていたのだが…… 「なんで森の妖精が商店街で商売してるのよ!?」 「それは……色々事情があって……」 「事情って? あと舞は席に座れ。きょうだい達が怯えてんぞ」  私が席に座ったのを確認してから、再びボックルちゃんは口を開く。 「俺達は元々、ちゃんと森に住んでたんだ。でも、そうもいかなくなって……」  ボックルちゃんの声がトーンダウンしていく。 「そうもいかなくなったって……何があったんだ?」 「……俺達が住んでた森は、レムレスの森だったんだ」  その言葉を聞いて、ネロが目を開いたのが分かった。でも、レムレスの森なんて初めて聞いた私は、ピンとこない。     
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